投げ銭はバイトを救うか!? 

アルバイトによる悪ふざけ動画で某チェーン店が一斉休業して、従業員の再教育と店舗清掃を行うと表明しました。

大学生・高校生などの若いアルバイトに、何百ページもあるマニュアルや損害賠償の怖さを、知識、経験の少ない若者に説明しても、恐らく自分の身に関係あることとして捉えることができるのでしょうか?

 

最近、印象に残った記事がありましたので、紹介します。

支付宝(アリペイ、Alipay)や微信支付ウィーチャットペイ、WeChat Pay)といったQRコードによる決済が普及している中国では、それらを利用した個人支援がビジネスの世界にも応用され、店舗などでの従業員マネジメントにも活用され始めました。

 

出典 wisdom.nec.com

ここ数年、中国で「西貝莜面村」という飲食店チェーンが人気を呼び、急成長しているそうです。

急成長した要因は従業員のサービスが良いことです。

スタッフは常に笑顔を浮かべ、着席すると床に置いた荷物入れのカゴや椅子の背もたれにかけた衣服の上から布製のカバーをかぶせてくれます。

スタッフはお客の動きによく目を配っていて、動きも機敏だし、確かに料理の提供スピードは速いです。

この店のサービスの良さの原動力とされるのが、従業員を対象にした、いわば投げ銭」「おひねり」の仕組みです。

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すべての従業員は制服の胸に二次元バーコードを貼り付けていて、そこには「感謝打賞 \3.00」と書かれています。

お客はこの従業員のサービスに満足したら、胸のバーコードを自分のスマートフォン(以下スマホ)のウィチャット(WeChat、微信)アプリでスキャンし、直接お金を払います。

一回は3元が基本。「\」の記号は中国の通貨単位「元(Yuan)を意味。

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3元の「おひねり」をスマホ決済で支払ったところ

 

1元は現在約16円だから、日本円で50円ぐらいになります。(注:一部の都市ではこの制度を導入していない店舗もあります)。

このお金はいったん店の口座に入りますが、店のマネジャーによると、店が一部を取ることはなく、全額が従業員に渡されます。

店の所在地域や店舗の立地などにもよるが、店の基準に沿った接客をしていれば、1ヵ月に数百元、日本円で数千円単位にはなるそうです。

都市部のレストラン服務員の月収は3000~4000元ほどなので、その10%ぐらいの感じでしょう。

この「おひねり」はあくまで客の任意です。

従業員は自分から客に対して要求はしないルールになっています。

江蘇省無錫市中心部のショッピングモールにある店で従業員に聞いてみると、「おひねり」をくれる人は「まあ1日に数人ぐらいの感じかなあ。金額の問題ではなくて、自分の仕事が喜ばれること自体がうれしい。やる気が出ますよね」と回答が返ってきました。

この仕組みのユニークなところは、お客が従業員に対して直接、お金を渡すだけでなく、店の店長にも会社から一定の予算が渡されており、従業員に対して臨機応変に「おひねり」を渡すことができる点にあります。

店の規模や従業員の数に応じて、店長に毎月500~1000元程度の「おひねり予算」が渡されており、褒めるべき行いをした従業員をその場でスキャンして、お金が渡ります。

まさに「現金な」評価の仕組みですが、これによって店長にも即効性のある従業員激励の手段を持たせています。

 

 

日本でも接客業に限らず、そのままの形で無くても試してみる価値はあるのはないでしょうか?

あらゆるリスクを想定し、対策を考えてから行動する日本。

とりあえず動きだして修正しながら進む中国。

今までのやり方で良いのでしょうか?

 

著者の田中 信彦(たなか のぶひこ)氏は、私が中国株取引を行う中で勉強させて頂いている方です。

経歴

BHCC(Brighton Human Capital Consulting Co, Ltd. Beijing)パートナー。亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科(MBA)講師(⾮常勤)。前リクルート ワークス研究所客員研究員
1983年早稲田大学政治経済学部卒。新聞社を経て、90年代初頭から中国での人事マネジメント領域で執筆、コンサルティング活動に従事。(株)リクルート中国プロジェクト、ファーストリテイリング中国事業などに参画。上海と東京を拠点に⼤⼿企業等のコンサルタント、アドバイザーとして活躍している。近著に「スッキリ中国論 スジの日本、量の中国」(日経BP社)。

 


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